SESで戦う中高年エンジニア

やはり、中高年エンジニアはマイノリティ

IT、WEBエンジニアと言えば、何となく若い人が従事する職業というイメージが持たれているのではないか?

かつて、「SE35歳限界説」というのがあって、35歳を過ぎると現場では求められなくなるとという大した根拠のない都市伝説だ。

たしかに、組織内では中高年に差し掛かると、管理職や営業、あるいは上流設計やマネージャーなどの調整ごとを担当する方向にシフトすることが多く、エンジニアとして残る割合は決して多くはない。

(もちろん、組織に属さずフリーランスで受託案件などをこなしている層もいて、こうした人たちは現役でエンジニアを続けているに違いない)

そうなっていくと、WEBエンジニアとしては果たして何歳まで仕事を得られるのか?企業に属さないと案件の受注さえ出来ず詰んでしまうのか?という不安を抱いている人も多いだろう。

コロナ前であれば、プロジェクトに参画したくても、例えスキルがあっても年齢によって門前払いを食らってしまうことがほとんどだった。当時は出社することが基本であり、高年齢のワーカーが入ってくると扱いに苦心するというのが大きな理由だろう。

が、状況は変わりつつある

ところが、日本の人口構成が未曾有の高齢化社会に向かっていくなか、年齢によってメンバーを選別することの方が難しくなって来ている。これはIT業界だけではなく、飲食や流通などあらゆる業界でも同じ状況にある。

ファーストフード店で70歳くらいのクルーが注文を取っている姿を見て驚いたことはないだろうか?かつてはありえない光景だったが、今はごく普通のことになっている。それだけ若い人が足りていないわけだ。

確実に時代が変わっているのであり、IT業界も変化の波をもろに受けている。

また、コロナ禍によってテレワークが定着したということも、多様な属性のワーカーを受け入れることが出来る下地になった。

そして雇用の概念も大きく変化している。仕事と言えば社員になり、会社のために朝から晩まで馬車馬のように働き続ける、という考えは次第に廃れていって、時短などの柔軟で多様な働き方が受容されて来ている。

SES(エンジニア派遣)の時代へ

IT業界に関してはどうか。

日本のIT業界はもともと多重下請け構造があり、業務の再委託、つまりエンジニアを外部から招き入れる(よく言えばアウトソース、悪く言えば使い捨て)で手配されることが多い。

この事は悪い事だとは思わない。

この構造のおかげで、これまでの社員としてのフルタイム雇用にとらわれない多様な働き方が可能になって来たからだ。

とにかく、こうした動向を反映する形で、エンジニアの「人身売買」を行うエージェントが近年急激に増加して来た。

このことによって人材にかつてないほどの流動性が生まれ、エンジニアは良い資質があればハンディがあっても案件を受けたり、開発チームに参加できる可能性が高まっている。

その最大のハンディが依然として「年齢」なのだが・・・

中高年でも全然戦えることが分かって来た

何を隠そう、自分はハンディだらけでもSES(エンジニア派遣)で仕事をゲットし、柔軟な働き方をかろうじて実現できている。もちろん、フリーランスの宿命上これがいつまで続けられるかどうかは誰にも分からないが、かつては不可能だと思っていたことが実現できたという意味で時代の変化を感じている。

とは言えハンディはハンディ、決して楽な道のりではなかった。

SESとの付き合い方・体験記

SES(エンジニア派遣)に挑戦しようと思った動機は、フリーランスとしての受託案件が思うように取れなく苦心していたことにあった。また知人もSES経由で案件を見つけたということで励みになった。

SES案件は無数にあり、検索や「フリーランス・スタート」などのサイトを調べればいくらでも見つかる。

手始めにいくつかエントリーをしてみた。

そうすると、すぐさま面談依頼が来る。ただし、これは採用企業ではなくエージェント側の面談。もちろんオンライン面談だ。

これに先立ち、スキルシートを提出する必要がある。実はこれがその後の成り行きを決定する重要なモノなのだが、当初はそこまで意識していなかった。

最初にスキルシートを書くときに困ったのが、フリーランス時代に手がけていた細々とした案件が、あまりスキルシート映えせずスキルシートが貧弱になってしまったということ。

そのため、様々な指摘を受けた。

「スキルシートがアピールしないので案件紹介は無理」
「ここはもう少し具体的に、詳しく書いて」(NDA締結してるんですけど・・・)
「何年何月から何年何月までは何をされていたのですか?」(その間遊んでいたわけじゃない)

ブランク期間と言ってもその期間何もしていないわけではなく、スキルシートに書くまでもない雑用仕事、あるいは普通に受託案件をこなしていたのだが、これが通じない。

なぜかというと、担当キャリアコンサルタント(キャリコン)自身も業界素人で、そういう事情をいまいち理解していないからだ。

ちなみに、キャリコンの属性はとにかく若い人(新卒っぽい人もいる)で、最低限のIT用語だけは知っているが業務はほぼ分からないという感じが多かった。

とにかく、スキルシートをそれっぽく仕上げることからスタートになる。

そこそこ骨が折れるのだが、一度作って仕舞えばある程度使い回しが効く。

色々なエージェントからスキルシートについてツッコミを受けた結果、何となく受けるスキルシートが分かって来た。

  • とにかく「ビッグプロジェクト」っぽい案件がびっしり並んでいる
  • 担当箇所が詳しく書いてある
  • ワンマン案件よりも、プロジェクトの一員の方が評価される(という謎)
  • あまり盛りすぎるのは良くないが、タッチした言語や技術はもれなく書いておいた良い
  • ブランクは嫌われるので、何とかして繋げておく、とにかくやっていた事を書いておく

スキルシートだけで言うと、フリーランスとして受託案件をこなしてきた者よりも、派遣エンジニアとして現場を渡り歩いて来た者の方がエージェント受けが良いようだ。

前者に属する自分は、当然かなり不利で、若いキャリコンから遠回しに「難しいですね・・・」を連発されてしまった。

それでも1ヶ月くらいでようやく現場が決まった。それほどフィットしているとは思えなかったが、面談回数は1回だけで契約に進めた。

それ自体はラッキーだったかも知れないが、実際に入ってみると色々な問題を抱えている現場で、自分としては継続したいと思える環境ではなかったため、半年ほどで自主的に退場させてもらった。

その後、SESでないルートから案件を受け、しばらくは従事していたが期間が終了し、再びSESを頼ることになった。

この時はSESを使うのが2回目だったので、ある程度気持ちに余裕を持って挑んでみた。

が、現実は厳しかった。「年齢」というハンディが否応なくのしかかっていた。初回時よりも年齢がプラス2されていたことが予想を超える障害になっていた。

当初エージェントは数を増やさないようにと思っていたのだが、面談しても面談しても案件の紹介が来ず・・・結局焦って次々と新しいエージェントの面談を申し込むというループにハマって行った。

結局何社くらい登録しただろうか?片手の指は超えるが両手の指を超えないくらいだったと思う。

年齢による「足切り」で書類さえ通らず、紹介する案件もないという状況だったに違いなく、案件はなかなか流れてこない。

案件単位で個別にエントリーができるエージェントサービスもあって、クリックだけで申し込めるので便利は便利だが、押した数だけ翌日に「お祈りメール」が返ってくる。年齢による自動足切りだろうか?予想はしていたが、さすがに凹んでくる。

たまに流れてくる案件はブラック臭を感じるもので、こういうものは遠慮させてもらった。

こんな状況が続き、いよいよ長期戦を覚悟した頃、唐突に有力な案件が流れて来た。

この頃になると、いつ頃面談したエージェントからなのか、把握できなくなっていた。

が良く思い返してみると、なんと一番初めに面談し、その後案件の紹介もなく放置されていたエージェントだったことが分かった。

とほぼ同時に、別の会社から良さげな案件の面談依頼が入った。

自分としては確度が高そうな方と話を進め、契約に至った。

こちらは、内容とのフィット感は決して高い方ではなかったのだが、いくつかチャレンジングな内容を含んでいて、将来をを見据えて参画するのが得策と考え、契約を決めた。

ちなみに、なぜ自分が拾われたか、おそらくだがスキルシートに「あるキーワード」が含まれていたからだと思う。特に自分はそのキーワードが示す技術のスペシャリストというわけではないのだが、そのキーワード自体ニッチ感があるものであり、自分が拾われたというより、そのキーワードが拾われたと言う格好になる。

だからスキルシートには何でも書いておいた方が良いと思っている。

例えば、「趣味」の欄。

エンジニアなのに「趣味」の欄を設けてあれこれ並べるのはバカっぽいとかねてより思っていたのだが、案外そこの内容が引っかかるということもあり得るので(その趣味の内容に関連したサービスや企業など)、書けるモノだったら書いておいた方が良さそうだ。

今回はそのような欄は設けなかったが、次回はその辺も意識してスキルシートを整備しようと思った。

資格・認定は見られているか?

これも大まかな肌感覚に過ぎないのだが、資格や認定についてはほぼ話題になる事はなく、あまり重視されていないように感じた。

選考時の「参考程度」という所だろうか、いや参考にされている気配もあまり感じず・・・

採用側としては、実際に業務をこなせなければ、そんな資格など何の役にも立たないので、関心が低いのではないか?

じゃ、資格や認定の取得は無駄かと問われると、決してそんな事はないと考えている。

どんな分野であれ、資格取得の勉強をすると様々な発見や気づきを得られる。業務では扱わなかった「水面下」の知識も得られ、それが業務に従事した際の「基礎体力」になり、より評価され、活躍の場を広げられるだろうと思う。

資格取得は「自分のため」と割り切り、それ自体が採用へのパスポートになる事はそれほど多くないと認識しておいた方が良さそうだ。

自分自身、いくつかの難易度小〜中レベルの資格・認定を持っているが、それぞれの取得する過程で得られたものは決して少なくなく、何らかの形で業務に還元出来ていると感じている。

ただ、ここでネックになっているのが、常に上がっている受験費用だ。国家試験は総じて安いが、ベンダー系ともなると入門資格を除き数万円からスタート、トップレベルになると100万円近くのものまであるという。

正直、こんなところで楽なビジネスをしている各ベンダーに対しては理不尽なものを感じてしまうのだが、文句を言っても仕方がない。

実際、国家資格よりベンダー資格の方が受注に役立つという話も聞くので、費用が高くても「元を取れる」可能性が高いのだろうか?

結局、IT技術者は一生モノの仕事になると思う

SEやエンジニアには必ず年齢何歳限界説、みたいなものが飛び交うものだが、日本の人口構成など急速に変化しており、そういった迷信は当てにならなくなっている。

SESも、中高年応援を謳っていたり、中高年専門のところも出て来ている。

あるエージェントさんとの話では、60代のフロントエンドエンジニアなんかもおられるそうで、ITエンジニアは若い世代が担うという今までのイメージは通用しなくなっている。同じく60代や70代のデザイナーやサーバエンジニアがいたっておかしくはない。

他の様々な職種と同様、一生従事することが出来る職業として認知されてくると感じている。

ただ、能力的に言うと30〜40代前半がピークになるということも否定できない。

これはちょっと抗えない事実なので、条件面を有利に展開するのは厳しいものとして受け入れるしかないだろう。実際、面談の前後で報酬の「ディスカウント」を持ちかけられることもある。

ところが、エンジニアとしてのパフォーマンスが最も高いのが30〜40代前半だったとしても、すべての現場でそのピークのパフォーマンスが求められるとは限らない。

何かの本で、ハイパフォーマーだけで構成したチームより、能力にバラエティを持たせたチームの方が良好な結果を生み出せた、という研究結果があるということを読んだことがある。

そんなわけで、7掛け、8掛けくらいのパフォーマンスが丁度良いというプロジェクトもあるだろう。パフォーマンス以外の観点での能力が重視されるケースもあり、場所場所によって求められるものが違うということだ。

中高年ITワーカーはそういったニッチにうまく入り込めれば貢献度も高くなり、評価も上がるのではないかと思う。

本当は一国一城で行きたいところだが・・・

自分がたまたまSESを利用したので、SESを中心とした体験記になったのだが、もちろんこれが唯一の方法ではない。

本来であれば、中高年エンジニアはこれまでに培った人間関係をベースにして自身の事業として展開するのがベターだと思う。

自分もその方向を目指していたのだが、実際の話人脈なんてものは当てにはならないし、安定的に仕事を受注できるルートがうまく作れず挫折してしまった。

逆にそれほど人脈がなくても、商流をうまく切り開けている人は事業化出来ている。有力な商流の下流にうまく立ち回り、「口を開ければ仕事が入ってくる」体制を作ってしまっている人もいる。

これは誰もが出来ることではないし、自分にも出来そうにないと判断して派遣エンジニアになることを選択したということだ。

ちなみに、派遣エンジニアとしてプロジェクトに深く関わったとしても、人脈形成に役立つということをあまり期待しないほうが良い。あくまでも派遣エンジニアは交換可能な部品であり、個人的なコミュニケーションを取ったりということは稀だからだ。またエージェント企業の規定によってそういったことを制限されている場合もある。

業務を通して人間の絆を築くことが難しいという点、一抹の物足りなさを感じるが、これも時代とか様式の変化なのだろう。

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